SSブログ

2015-03-04 [東日本大震災]

あの夜の闇夜の中、ラジオから聞こえるニュースは、あなたの勤務先が津波で大変な被害を受けていると
伝えていた。

連絡がつかない不安な日々の中、あなたは小さなバイクで帰ってきてくれたよね。遮断された道路を
回り道しながら、5時間かけて。

長い単身赴任生活だったけど、いつも一緒にいられるのが当たり前だと思っていたの。当たり前に時間を
共有し笑ったり怒ったりしながら年を重ねていくものだと思ってた。

背後に迫る津波から必死で逃げ、無事に帰ってくれたあなたを見て、あなたの存在の大きさと一緒にいられる
幸せを思い知った私。無事でいてくれて、帰ってきてくれて、家族を大切にしてくれて、心から
ありがとう。

復旧のための過酷な毎日で白髪が増えたね。でも、隣で笑っていられるだけでいい。
共に白髪になりつつある私たちだけど、これからもずっと隣にいさせてね。
あの時のあなたの姿、決して忘れないから。

☆作品エピソード
震災時、夫は隣県の海沿いの勤務地へ単身赴任していました。自宅で二人の息子と被災した私は、夫と連絡が
取れず、両親の介護のために駆けつけることもできず、不安な時間を過ごしました。3日後に帰宅した夫は
「家も家族も津波で失った同僚がいるので放っておけない。近くで守ってやれなくてごめん」と言い残し
職場に戻りました。そんな夫を誇りに思い、いつか何かの形で伝えたいと思っていました。普段は照れも
ありますし、手紙という形で伝えられることをうれしく思います。

2015.2.28 河北新報・3.11大震災 伝えたい手紙
一般部門・優秀賞 「夫へ」 仙台市青葉区 高橋佐知子さん(49)

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。